奥上高地 ― 涸沢・槍沢で紅葉を楽しむ

奥上高地という言葉のあることを最近知った。奥三河、奥軽井沢、奥蓼科、
奥日光、奥吉野などという別荘地の名称のようなものもあることから、ち
っとも不思議ではないのかもしれない。時代とともに言葉も変化し、新し
い用語が出てくることは、十分にあり得ることだ。それならわたしも使わ
せてもらおう、とそんなことを考えた。

上高地とは、釜トンネルを出たあたり、大正池から河童橋を中心として明
神、徳沢あたりまでを称するのだろうか。
昔は徳本峠を越え、上高地へ入ったのだから、 「徳本峠入口」が上高地の
玄関口だった。徳沢のもっと奥、横尾を中心として、涸沢カール、槍沢カ
ールあたりまでを上高地に含むのなら結構奥が深いけれど、奥上高地と言
うことならどうだろう。ついでに徳沢あたりまで奥上高地に入れてしまお
う。当然異論はあるだろうけど、こっちの事情(何の事情やら)もあるの
で、そういうことにする。

大正池より望む穂高連峰
涸沢カールより望むモルゲンロート
涸沢カールの朝

上高地バスターミナルから涸沢カールまでは、休憩を入れて6時間ほど
かかっただろうか。そこは期待した以上の別天地(絶景)だった。

朝日を浴びる涸沢小屋

初めて泊まった山小屋が涸沢小屋だった。幾度も雪に押しつぶされ、
流されては再建された涸沢小屋。幾千人、幾万人の岳人が、ここから
巣立っただろうか。

涸沢小屋(1980年代)

涸沢の夜

涸沢小屋でビールを飲みかわした初対面の面メン。
山男もいれば、観光気分でちょっと立ち寄った、という方もいた。
そこで知り合った方の紹介で北八ッの小屋に泊まったことがある。
その小屋では、個室を用意して頂き、お酒付き、湯たんぽ付きの
豪華な小屋どまりであった。
素性の知れないお酒、それに湯たんぽと個室代は無料だった。
一年前の素っ気ない態度とは天地ほどの差があった。
そこのオヤジの言うことにゃ、「彼とは寄り合いで一度会っただけ」
だと。
そうなの?
「俺の紹介といえば悪いようにはしないさ」とは言っていたけど…。

ナナカマドの紅葉

鮮やかなナナカマドの紅葉を見たのは涸沢だった。
その昔、高名な山岳写真家の撮影した涸沢の写真に衝撃を受けた。
美しいとは言えないけれど、そのダイナミックな陰翳に感動した。
ナナカマドの美しい色は、数時間だけだという。
今年も鮮やかな色を見せてくれただろうか。

ナナカマドとダケカンバのモザイク模様
氷河が運んできた岩?
ナナカマド

デジタル写真の色
いく度も涸沢に通い、秋の盛りを楽しんだのは30余年前のこと。
山の写真を撮るには中判カメラがいいだろうと、発売されたばかりの
NEW MAMIYA6 を購入した。もちろんレンズも3本購入。フィルム
は、風景によいという富士のポジを持って行った。
手ごたえは十分にあった。でも、あまりの派手な仕上がりに愕然とし
た。
いま過去に撮影したポジを見直してみると、デジタルの世の中になり
風景写真は派手めの絵が好まれるようになったのか、あるいは派手な
色に慣れてしまったせいか、さほど違和感を感じなくなってしまった。

下山の途中で
屏風の耳?
北穂高岳

いつかは登ってみたい北穂高岳。二三日テッペンの小屋で のんびりと
山の景色を見て過ごしたいものだ。

涸沢カール・横尾間

風の谷 槍沢

“風の谷のナウシカ” ではなく、風の吹きすさぶ谷 槍沢であった。
ある年の秋、槍沢の紅葉はどうであろうか、と槍沢に遊んだことがある。
その日は台風が本州に近づいていたせいか、とても風の強い日であった。
槍沢は風の通り道なのだろう。ダケカンバが強風に煽られていた。

槍 沢
枯れたダケカンバ(雪の重みで曲がったようだ)
絶壁のモザイク模様
横尾尾根は雲の中
ダケカンバの枝と幹が風に煽られる
晴れた日なら鮮やかな色だろうに
ダケカンバの動きは見飽きない
カラマツのようだ

槍沢小屋の思い出
ある秋の日に槍沢を散策した夜、槍沢ロッジに泊まったことがあった。
夕食後小屋の書棚の中に一冊の興味ある題名の本を見つけた。たしか
北アルプスの秘境と言われた雲ノ平を紹介した『黒部の山賊』という
新書版の本だったような覚えがある(それまでは雲ノ平という山名す
ら知らなかった)。 著者は伊藤正一氏である。

黒部源流部には、山賊が集団で住んでいたというのだ(まるで水滸伝
梁山泊ではないか)。その山賊との「交流」と山で生き抜くチカラ
(技術)、山で経験した奇々怪々な出来事、その記述がとても面白い。
その本は復刊され、今では山の本の中でベストセラーになっているよ
うなのだ。
その伊藤氏の著した『黒部の山賊』を三十余年前に槍沢ロッジで読み、
いつかは雲ノ平へ遊んでみたいと思っていた(翌年成就)。

槍沢下流(下山の途中で)
一ノ俣出合付近だったような?

この辺りは大雨で川の様相が大きく変化する 。

間もなく横尾(槍沢上流を望む)
河童橋より望む穂高連峰

撮影年:1980年代