十三湖は縄文遺跡の宝庫

十三のすなやま米ならよかろ…

十三の港は中世から栄えた港で、北前船が津軽米や材木を盛んに積みにきたという。
わたしが訪ねたころは砂山ばかりが威容を誇り、とてもそんな時代があったとは信じられないほど寂れていた。

十三湖
特産のシジミ採り
かつて繁栄を誇った「十三湊」の全景

上の写真右手の湖が十三湖、左手の砂防林の奥には日本海がある。画面
中央に小泊岬(権現崎)が見える(その麓に下前がある)。中世には日
本海を巡る船が行き交い、相当なにぎわいを見せた有数の港(十三湊)
であった。

橋を渡り対岸に向う
漁具を格納する小屋だろうか
廃船らしき船があった
十三湖周辺の風景は物悲しい
砂に うずまり掛けた家があった

亀ヶ岡遺跡と菅江真澄

江戸時代の紀行作家菅江真澄は十三湖北部の村々の寺院跡を訪ね歩いて
いる。真澄は小泊から十三を通り、鰺ヶ沢に向かう。途中、堂の前と呼
ばれている「このあたりの土を掘ると、瓶子、小甕、小壺……むかしの
土器のかたちをした器を掘りだすことがある。それで、ふるく瓶が岡
(亀ヶ岡)の名があった……」と書き記している。江戸時代、すでに亀
ヶ岡遺跡からの出土品は珍重され、江戸で数寄者に人気があったという
から驚く。

後年(といっても現代の話)、考古学の研究者が『菅江真澄遊覧記』を
読み、「堂の前」という地名をたよりに地面を掘ったら遺跡が出た、と
いう一見作り話のような本当の話がある。菅江真澄は亀ヶ岡遺跡どころ
か 三内丸山遺跡 の存在を知り、現地へも足を運んでいたのだ。

鰺ヶ沢町北部 十三湊まで砂丘が連なっている

津軽の縄文遺跡

津軽には“縄文時代“の亀ヶ岡遺跡と三内丸山遺跡がつとに有名であ
る。“縄文時代”は一万年続いたとも言われ、狩猟、漁労、採集など
によって生活していた。必要な分だけ採り、獲物は分け合って生活
していたのだろう。余剰の生産物はさほど無かったので共同体の長
はいても階級は存在していなかったということだろうか。
亀ヶ岡遺跡からは漆を塗った器物が出土していたというし、私の好
きな遮光器土偶も出ている。津軽は縄文時代の一大中心地だった。
そして意外に進んだ文化を持っていたのではないか。何と世界最古
級の土器(微隆起線文土器)は、約一万年前に青森にあったのだ。

イザベラ・バードと津軽

ところで英国人女性 Isabella・L・Bird という名の旅行作家(写真家・
地理学者)が、明治十一年(1878)に日本を訪れ東北・蝦夷地を旅し
日本奥地紀行』を著し、主に北日本の地理、風物、庶民の生活、そし
て少数民族であるアイヌを欧米に紹介した人物がいたことをご存知だろ
うか。当時、その全行程を馬あるいは徒歩で踏破したヨーロッパ人はだ
れ一人いなかった(外国人には東北・蝦夷地の情報を得ようとしても、
全くといってよいほど得られない状況であった時代である)。
『日本奥地紀行』に当時の津軽地方の農民の生活を記述したところがあ
るので是非とも紹介したい。

途中通ったいくつかの農村の人々は非常に原始的な家に住んでいた。
まるで木の枠組みに手で土を塗りつけたような土壁の露出する家だっ
た。その壁は内側にやや傾き、草葺きの屋根は粗末であり、軒は深く、
軒下には木材が実に雑然とうず高く積んであった。煙出しのある家は
ほとんどなく、たいていの家では、まるで英国の煉瓦焼き窯のように、
至る所から煙が出ていた。窓はなく、壁も垂木も黒光りしていた。薄
暗い家の中は二つの部分に分かれており、一方には鶏や馬が、他方に
は人間が住んでいた。家の中は素裸の子供でいっぱいだった。

そして夕方再び通りかかった時には、男女の別なく諸肌になった大人
たちが家の外に座り込み、その傍らにはお守りだけを身につけた素裸
の子供たちと数匹の大きな黄色い犬がいた。犬もまるで家族の一員の
ようで、犬の顔も、子供の顔も、大人の顔も、すべての顔が穏やかで、
満ち足りた感じがした!

たくさんの良馬を所有しており、豊かな作物にも恵まれている。祭の
日にはきっと、たくさんもっている着物の中から選んだもの(晴れ着)
を着るのであろう。身の回りのものに関する限りそんなに貧しいとは
思えない。非常に辺鄙なところに住んでいるだけのことである。彼ら
はこれ以上の暮らしを知らず、現状に満足している。ただ、その住ま
いはこれまで見たもののうちで最もひどく、この素朴な楽園の人々は
土埃にまみれていた。週に一度沐浴するのかどうかさえも疑わしいほ
どだった。」
……東洋文庫『新訳 日本奥地紀行』第三十報より引用

私が津軽を訪れたころから、90年余り前の記述である。事実をありの
ままに書いたというし、読んでいて違和感は無かった。その後 彼女は
関西を訪れ、奇しくも私が働いていた職場にも来訪していたことを、
その本から知った。

※記事は、以前投稿したものを再編集しています

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