枕草子抄 男こそ なほいとありがたく(蓼食う虫も好きずき?)

男って やっぱり変ってるわ !
というものは、わたしから見ると、めちゃめちゃ不可解な感情
を持っている生き物だわ。だって、とてもきれいな女性を捨てて、
どこがいいのかと思うような女性を妻にしているのも、わけが分
らないし。

 

ヤマユリ

 

宮中に親しく出入りしている男や、名門の子弟などは、たくさんいる
女性の中でも特にすぐれた人を選んで愛しなさるのだろうけど。
中にはとても手の届かないような高い身分の女性であっても、すばら
しいと思う女性を命をかけて恋い慕うということもあるだろうし。

人が大切にしている娘や、まだ見たことのない女性のことも、すばら
しいと評判の女性をこそ、どうかしてわが物にしたいと男は思うみた
い。そのくせ一方では、わたしが見ても感じ悪いと思う女性を愛する
のは、いったいどういうこと?

 

ウバユリ(名の由来が面白い)

 

容貌がとてもきれいで、気立てもよい女性が、字も上手に書き、
歌も感情豊かに詠んでよこしたりするのに、男は返事はこざか
しくするのに、そのくせ女性のところへは寄りつかず、可憐な
様子で嘆く女性を見捨てて他の女のところへ行ったりなどする
のは、あきれかえって、ひとごとながら腹が立って、腹が立っ
て…
こんなこと、はた目にも不愉快な感じがするのに、当の男は自
分のこととなると、少しも相手への思いやりなど気がつかない
んだから!」
『枕草子』第二五一段意訳

関西人からすると ツッコミどころ満載かな?
写真は “ユリ二題” (たで食う虫も好きずき)ということで…

さらに「うちとくまじきもの」(気の許せないもの)という随
想的章段の終わりの方に、海女とその男の姿を描いている所が
ある。

はやはり非常に恐ろしいと思うのに、まして、海女が獲物
を採りにもぐるのは、見るのもつらく感じられる仕事だ。腰に
つけている緒が切れでもしたら、どうしようというのだろう。
せめて男がそれをするのなら、それもよかろうが、女がすると
なると、やはり並一通りの気持ちではないであろう。舟に男は
乗って、歌などのんきそうに歌いながら(女のつけた)この栲
縄(たくなわ)を海に浮かべて漕ぎまわる。あぶなっかしく、
気がかりではないのだろうか。

(海女が)海面へ浮き上がろうとして、その縄を引くとかいう
ことだ。(その縄を男が)あわてふためいて舟にたぐり入れる
ありさまは、まことにもっともなことだ。あがって来た海女が
舟端をおさえて一気に吐き出す息の様子などは、本当に(哀切
で)ただ見ている人でさえも、涙をもよおすのに、(その海女
を)海にもぐらせて、海の上をぶらぶら漕ぎまわる男は、あき
れかえるほど、ひどいことだ。」…現代語訳:神作光一氏

清少納言の観察は具体的でおもしろい。男には男の、海女には
海女の事情(肉体的な差異)があるのだろう。

 

さらに先日のこと、幸田露伴の「美人論」という随筆を読んで
いたところ、面白い文章に出会った。ついでながら この場で紹
介したい。

向の小町と云われた美人は無類の醜男子安井息軒先生を好
んで其夫にした。かかる美人もあったことを思へば南洲先生の
やうな人のあったことも事実だろう(西郷隆盛は女の美醜など
は一向頓着しなかったと傳へられて居る)。何でもよい、蟹は
横行し蝦(エビ)は縦行する、人の好きずき、蟲の好きずき」