昭和の記憶 - いつかは数寄屋造(一期一会)

いつかは数寄屋風の家に住んでみたい、と夢を見た。
仕事柄、国宝や重要文化財である建物に出入りすることがあった。
書院造り、寝殿造りの魅力とそこでの生活の大変さも、人よりは
肌で感じている。夏は良いとしても、厳冬期には炭櫃だけでは体
は暖まらないだろう。戸を閉め切っても隙間風は入るし、当時の
贅沢な生活(庶民と比べ)をしていた貴族の方々はどれだけ寒さ
に強かったのだろう。『枕草子』にも寒さに打ちひしがれた様子
は見えない(真冬の宿直は辛かろうに)。

 

 

 

 

 

数寄屋での一期一会
書院造り・寝殿造りの屋根には、日本古来の茅葺屋根に通じるものがある。
伊勢神宮の簡素な屋根の面と棟のラインの美しさ、そして白木を用いた掘
っ立て小屋風の造作には眩しくて言葉も出ない。
茅葺屋根の家に再び住んでみたいと思っている。それは今の時代では、と
ても贅沢なことに違いない。裕福な人が、庭のあちこちに選りすぐりの部
材を用いた何軒もの数寄屋風の“茶室”を建て、“ワビサビ” を論じ、名物の
茶碗で茶を喫し、贅沢な時間を客と共に過ごすおもてなしをする。それが
一期一会である。

 

 

 

 

 

 

茅屋のおもてなし
子供のころ、こんなことがあった。小学校の授業を終え、仲良しの友の
家に寄った。その家は周囲が田んぼばかりの中にただ一軒ある、小さな
茅葺屋根の家だった。その家には父親の姿は無く、母親一人に子沢山の
家庭だった。
その家でお昼ご飯をご馳走になったのだ。囲炉裏に黒い鉄鍋を掛け、薪
をくべて「おじや」を作ってくれた。そして木の椀によそってくれた。
さじで掬っておじやを食べようとすると、いつの間にか悪ガキどもが突
き上げ窓から覗き込み、「食うな、くうな!」「下呂だ、げろだ!」と
騒ぎ立てる。あまりに酷いことを言うので、友の兄が怒って悪ガキども
を追い駆ける、ということを幾度かくり返した。そこで食べた「おじや」
の旨かったこと。食べるのに躊躇したような気もするが、出汁が良く出
ていて とても旨かった覚えがある。これもおもてなしである。

 

 

 

 

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