上高地 梓川流れる岸辺

 

上高地を歩く楽しみ
上高地に入るには新島々で始発電車からバスに乗換え、終点の上高地
バスターミナルに向うことがほとんどであった。まれに松本駅からの
始発電車の発車前に、見ず知らずの者数人でタクシーに乗ることもあ
った。
その昔、島々から徒歩あるいは馬に乗り徳本峠から眼前に広がる穂高
の山々を目にした者の感激はいかばかりかと想像するに、初めて河童
橋からの穂高連峰を眺め見る者の感動と違いはないように思う。
通常なら冒頭に河童橋から清流梓川越しに望む穂高の峰々の写真を飾
りたいところであるが、少しばかり捻って梓川の上流、槍沢からの流
れに沿って歩き 写真を構成してみた。

 

 

槍沢から望む岸辺の森

少し頑張れば一日で槍沢下流にある「槍沢ロッジ」に到着する。
翌日は槍ヶ岳に向うか、天狗原で槍を眺め遊ぶか、河童橋まで
のんびり散策するか、楽しみ方は色いろある。涸沢まで足を延
ばしロッジのバルコニーでビールを飲み昼寝するのもまた良し。

 

 

槍沢の奔流

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとたび大雨が降ると槍沢の様相は一変する。

 

 

槍沢沿いの森

 

 

 

梓川沿いの樹林

 

 

 

 

 

 

 

 

梓川沿いの森は下流になるほど明るくなる。

 

 

 

梓川越しに望む常念岳。

 

 

 

 

 

 

 

梓川越しに望む屏風岩と横尾尾根。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

槍沢と横尾谷の合流地点下流では水量も増え、水の色も美しい。
横尾山荘に泊まれば、広い湯舟で湯に浸かることもできる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨の降る日の上高地も水墨画を見るようで趣がある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

梓川右岸の木道。

 

 

 

六月上旬になると遊歩道沿いの森の中にひっそりと咲くヤマシャクヤク。
急ぎ足で山に登る者には眼に止まらない。

 

 

 

 

 

 

 

五月から六月にかけて咲くニリンソウの小さい花。

 

 

 

 

 

 

 

ケショウヤナギの白い花。六月ともなれば河童橋周辺にはこの花の綿毛
が宙を漂い、あたり一面雪が降ったように見える。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

徳澤より望む穂高。徳澤には複数の宿泊施設があり、料理も美味しく、
とても眺めの良い場所に位置している。昔は放牧場だった所でもある。
晩秋の頃、早朝や夕方の光線、紅葉、それに霧氷は絵になる。

 

 

 

 

穂高嶽
「自分の上河内に到ったのは若葉の時であった。徳本峠は島々から馬で
其頂上まで辿ることにした。老躯をいたはったのであった。然し馬上で
も餘り心も身も楽では無かった。峠は頂上に近づくに従って勾配も強く
なり路は電気形(ジグザグ?)になった。まだ雪が路傍に残ってゐるの
を目にするやうになった。山風は寒くなった。もう頂まで何程も無いと
いふので馬お下りやうと心構へしてゐると、突然として残雪の非常に多
いところを一転して過ぐる途端に、馬頭に当って眼前は忽として開けた。
もう自分は頂上に立ってゐたのである。

眼前脚下は一大傾斜をなして下ってゐて、其の先に巍然(ぎぜん)とし
て雄峙してゐる穂高は、其の壮烈厳偉な山相をムンズとばかりに示して
ゐた。たゞもう巍峨といふ言葉よりほかに形容すべき言葉はない。目の
前に開けた深い廣い傾斜、其向ふの巍々堂々たる山。何といふ男らしい
神々しさを有った嬉しい姿であろう。…」幸田露伴『穂高嶽』より

先日露伴の随筆を読んでいたところ、上高地に遊山していた文章に遭遇
した。長い引用だが、珍しいので紹介した次第である。昭和三年頃に訪
れた者の感激として正直なところであろう(露伴先生にしては捻りが物
足りないところであるが、芥川が小説『河童』を発表した翌年に訪れて
いるので、山好きの露伴先生のこと、上高地に興味を持ったのかも知れ
ない)。

 

 

 

一度は島々から徳本峠を越えて上高地に入りたいと思っていたのだが、
いまだに実現に至っていない。

 

 

 

明神池から望む明神岳。明神池畔には穂高神社奥宮があるので是非とも
お参りしたい。古風な造りの嘉門次小屋もあるので、休憩を兼ねて嘉門
次がウエストンから贈られたというピッケルを眺め往時を懐かしむも又
良し。明神池から流れ出る川の畔は、歩き疲れた体を休めるには最適な
場所でとても絵になる所でもある。

 

 

岳沢湿原

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

河童橋より望む穂高

 

 

 

 

 

 

 

 

ひとたび河童橋より穂高を望めば「日本アルプス」とはよくぞ言った
ものだ。初めてこの景色と遭遇したときには、月並みだが「日本にも
このような景色があった」と思ったものだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

上高地の魅力
上高地の魅力とはいったい何処にあるのであろうか。この場所に足を踏
み入れる者をとりこにする魅力とは…。陳腐な所見を述べるより、ここ
でもまた露伴先生の言葉を借りよう。

「山嶽の秀美や荘厳を受取って吾が心霊の怡悦と満足とを覚える場合は
おのづから二つある。一つは自分が歩きながらに絶えず変化して吾が眼
前に展開し行く危巌や峭壁や、遠い嶺の雲や近い渓の水や、風に揺ぐ玉
樹の翠や、野に広がる琪草の香や、姿を見ぬ仙禽の声や、さういふ種々
のものの中を、吾が身が経廻り、吾が魂が滾転し行いて、そして自分と
いふものを以て幽秘神異の世界を縫って行く場合である。恰もそれは測
り知る可からざる霊智と妙技とを以て描かれた大絵巻を一尺二尺と繰り
ひろがながら驚異感嘆の心をもて観賞し行く心持である。又恰も大手腕
ある史家が描いた一歴史を感動に満ちた心を以て一頁一頁と読み行く心
持である。
そして其等にも増した何とも云へぬ感激を以て山径水漄を過ぎ行く其の
心持といふものは、到底比擬すべき何物も無い霊秘なものである。其の
筈である、大絵巻も大文章も畢竟は自然の復現であって、これは自然の
直現であり端的であるからである。……」…『穂高嶽』冒頭より

 

上高地には一年を通して通ったものだが、撮影した写真をいま見直して
見ると、春に撮影したカラー写真が思いのほか少ない。春から夏にかけ
てはモノクロームで撮影したものが多い。関心のある方はそちらも合わ
せて見ていただけると嬉しい。秋に撮影したものは後日に投稿予定。

※撮影年:1980-1990年代

 

 

 

 

    上高地 梓川流れる岸辺” に対して 6 件のコメントがあります

    1. ken より:

      なるほど、そういうことでしたか。
      了解しました。

    2. ken より:

      こんばんは。
      上高地は随分前から妻と一度行ってみたいと話しながら、未だに行けていない場所です。
      一度は行って大判で撮ってみたい場所の一つでもあります。
      しかし、大勢の人の居る時期は避けたい思いもあり、なかなか行けていません。
      お勧めの時期などあったら教えて下さい。

      1. koji-kame より:

        ご訪問ありがとうございます
        上高地へは20年近く行っていません。なので現在の状況には不案内です。もしカラー写真で撮影するのなら6月上旬、紅葉を狙うのなら10月いっぱいでしょうか。上高地と槍沢、涸沢では季節感に違いがあります。涸沢の紅葉の盛りは11月上旬でしょうか。その時期は小屋は大混雑なので覚悟が必要です!
        モノクロームなら一年を通していけるのでは。ケーブルを利用し西穂高(丸山あたりまで)登るのも眺めは良いしお奨めです。体力と根性に自信があるなら活火山の焼岳もいいです。上高地へ行くにはとても交通の便は良くなったけれど、渋谷の雑踏を歩くような覚悟が必要かも知れませんね。一度は行ってみてください。

        1. koji-kame より:

          先ほどのコメントに誤りと補足があります。
          涸沢の紅葉の盛りは10月上旬です(年により差があります)。西穂高へ上るケーブルは岐阜県側からしかありません。最後の駅から西穂高山荘までは一時間ほど。そこから又、丸山へ歩く(1時間ほどか)ことになります。天候が良ければ楽に登れて上高地や岳沢を眼下に眺め、笠ヶ岳、霞沢岳、穂高の峰々が一望できます。モノクロームにはいいかも!

          1. ken より:

            アドバイスありがとうございます。
            上高地に行く際には参考にさせて頂きます。
            ところで、「ギャラリー同仁斎」が開けないようです。
            URLが変わったのでしょうか?

            1. koji-kame より:

              「ギャラリー同仁斎」は「やまと草紙」に移行を終えたので削除しました。予定より早めに終えてしまいご迷惑をかけます。

    この投稿はコメントできません。