京都北山 巨樹の森の四季(後編)

 

巨樹の森の夏から秋へ
国境の長いトンネルを抜けると雪国であった、というのは小説『雪国』の
冒頭部分であるが、冬季に京都市内に雪は降っていなくても、鞍馬山の少
し北にある花背峠を越えると、そこはもう雪国なのだ。
北山は準平原、あるいは丹波高原とも呼ばれ日本海気候である。でも高原
と言っても夏はちっとも涼しくない(夜は涼しいけれど)。そんな季節に
北山歩きは汗だくで”行”のようなものだけれど、家の中でエアコンの冷気
にあたってばかりも居られない。尾根歩きに、そして沢歩きに出かけてみ
た。

 

初夏の芦生の森

由良川最深部には見事な混交林が見られる。

 

 

 

貴船川の上流にある芹生峠を越えると、灰屋川の向うには美しい森
が見える。桟敷岳辺りだろうか。

 

 

 

 

 

 

井ノ口山ウラスギ群生地

樹齢800年を超える芦生杉(アシウスギ・ウラスギ)の群生地である。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

根元部分だけ切取られたアシウスギ。

 

 

 

杉に蔦が絡まり、共生というよりは熾烈な生存競争が繰り広げられている。

 

 

 

井ノ口山ウラスギ群生地へ行くには、京都バスに乗り原地中ノ町バス停
で降り、ナベ谷川に沿ってナベ谷峠まで登る。緩やかな登りなので分岐
を誤らなければ峠までは40分ほどか。そこから北の方角へ少し歩けば、
そこが京都府特別環境保全区域に指定されている「片波川源流域伏条台
杉群生地」である。この山はその東端にあるようだ。
※1980年代の情報なので、現在は林道も開かれ状況は変わっているはず。

 

 

伏条台杉

切株から若い樹が複数伸びているのが分る。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

かつては、手頃な太さの木に育ったなら伐採したのだろう。
今でも民家の裏山一つが小さな伏条台杉群になっている場所がある。
伏条台杉は先祖代々受け継がれてきた杣人の技なのだ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

幹を切断した場所が腐朽菌に侵されたのだろうか、新芽が出ずに朽ち
ている。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「イタドリの木」

生きた状態でイタドリされた杉。丸木の状態では里まで下すのには大変な
労力が必要なので、山で太い株の部分だけを切取り、背中に担いで運んだ
ようだ。古株には綺麗な杢が出ているので、机の鏡板にすると高値で取引
されるのだとか。幾本かこういう樹を見てきたが、これだけ生々し状態で
見られるのは珍しい。

 

 

トチノキの老木

涼し気な川筋を歩いて見よう。

 

 

由良川最深部

北山には数えきれない数の川が流れている。北山だけに言えるようだが、
道に迷ったなら「川を下れ」と言い伝えられている。川下には必ずと言
ってよいほど里があるのだとか(試したことはないので本当かどうかは
分らない)。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

由良川源頭部の森

もう少し北へ歩けば、そこは日本海が望める杉尾峠だ。

 

 

由良川最深部のトロ

夏場は沢歩きや釣りにも良さげな北山の渓流である。だいぶ以前の
ことだが、この川で開高健が渓流釣りをしていたという噂があった。

 

 

由良川最深部の原生林

最深部の川沿いにはトチノキの巨樹群がある。

 

 

 

 

 

 

秋深まる芦生の森

 

 

 

 

アシウスギと広葉樹の混交林の美しさは他の山域では見られない。
北山全体が杉の天然林分布地帯だという。

 

 

 

秋の一日、佐々里峠から由良川を目指す。広葉樹に囲まれた山道に
味わいがある。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

井ノ口山ウラスギ群生地

秋の紅葉の美しい季節に井ノ口山を歩いてみた。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

バス停から歩いて二時間足らずでこの場所を訪れることができるのだから、
嬉しいではないですか。今までこの場所で誰とも出会ったことがないのが
不思議な気がする。30年前には、貴重な森とは思われていなかったのかも
知れない。

 

 

 

夏に訪れた時と同じ構図が続きます…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

夏に訪れた時と違い、森の中は明るくとても気持ちが良い。

 

 

 

ウラスギ三兄弟か?

 

 

 

 

 

 

 

片波川源流域伏条台杉群生地には、縄文杉に次ぐ太さの杉があると言う。
北山山域には、他にも幾つかの伏条台杉群生地が確認されているが、アプ
ローチが長かったり、危険な場所であったり、民有地であったりするので、
ガイド無しで観察に入るには難しいものがある。

 

 

雪による根曲がりか? 大地にどっしりと根を下ろしていて逞しい。

 

 

トチノキの黄葉

トチノキの黄葉は逆光で見るととても美しい。ほとんどの葉を落とした
頃のトチノキも、また趣があっていいものだ。

 

 

秋深まるトチノキの谷

 

 

 

広葉樹林

 

 

 

 

アシウスギ、ブナ、ミズナラに混じり、ナラ、クヌギなどの木々の紅葉も
素敵だ。北山にも広葉樹林の信じられないほど美しい場所があった。

 

 

 

広葉樹林の美しさは、国木田独歩が『武蔵野』で描いているが、北山の
広葉樹林の美しさもまた絶品である。余談だが、独歩が描いた武蔵野の
森は、実は現在の渋谷駅からほど近い場所なのだとか。独歩や二葉亭四
迷も良いけれど、やっぱツルゲーネフでしょう。

 

 

 

夏場にはモリアオガエルの産卵場所だったナラと、その下にある水溜り
(由良川源頭部氾濫原)。

 

 

 

 

 

 

由良川最深部のトチノキ原生林

秋を待って地蔵峠から入った。期待通りの黄葉だった。

 

 

由良川源頭部の紅葉

 

 

 

 

 

 

 

佐々里峠の尾根道

いつもこの道を歩いて由良川へ向う。日帰りは少々きついが好きな道
である。真冬の大雪の降った後は途中で引き返した(一人でのラッセ
ルは大変だった)。

 

 

 

 

 

 

トチノキの実

そのままでは食べられないので、流水に数日間浸したりしてアク抜きを
するのだとか。山に住む者にとっては貴重な食糧でもある。

 

 

 

 

 

 

芦生の森の紅葉

 

 

 

 

紅葉の盛りを過ぎた広葉樹林であっても、見る者の目によっては
また美しいものだ。

 

 

 

トチノキだろうか、風に飛ぶ木の葉に北山の風情が感じられた。

 

 

 

 

 

 

佐々里峠の夕暮れ

広河原から佐々里峠経由で由良川に向い、帰りは車道を歩いて広河原へ
戻る途中、峠の佐々里側で綺麗な夕焼けに出会った。ここでカメラを出
して撮影すれば最終バスには乗れない。ままよ京都市内まで徹夜で歩く
ことを覚悟して三脚をセットし撮影に入った。
帰りはどうなったかって? 普通トラックが峠から降りてきたので、訳
を話して広河原まで送ってもらい、最終バスに間に合いました(あの時
の田歌地区の大工さん有難う)。

 

 

 

 

北山の写真撮影から三十年が経ち、写真を見直してみた。ポジフイルムは
経年による退色、変色が進みガッカリするような状態になっていた。それ
を慣れない写真編集で、なんとか見れるまでにはなったかと思うのだが。

写真を見直して思うことは、よくもまあ飽きもせずに通い、歩いたものだ、
と言うことである。いったい何がわたしをそうまで駆り立てたのだろうか。
記憶をたどってみると、何かを見つけに北山に入っていたのではないか、
そんな気がするのだ。それを見つけたのかどうか…う~ん 思い出せない。

撮影年:1980-1990年代

 

 

 

 

    京都北山 巨樹の森の四季(後編)” に対して 2 件のコメントがあります

    1. ken より:

      昔のポジフィルムはもう何年も見てません。
      僕のフィルムはまだ退色はしてないと思います。
      今はモノクロフィルムばかり使ってますが、昔はポジフィルムばかりでした。
      今でもネガフィルムよりポジフィルムの方が好きかも知れません。
      たまにはポジフィルムで撮ってみようかとそんな気になりました。

      1. koji-kame より:

        コメント有難うございます。
        ポジの経年変化は、意外にも「外式」の方が進んでいるような気がします。
        雨の日には好んでベルビアを使っていましたね(晴天の日は使いません)。
        それにしても、ダイレクトプリントは綺麗だったけど高くつきました。
         kame

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