花の北山を歩く ー 峠道と樹の色いろ

 

峠道は
峠道は花背峠、芹生峠、佐々里峠、花折峠、夜泣峠、石仏峠、祖父谷峠、
魚谷峠…北山には数えきれないほどの峠道がある。その名に惹かれ、伝説
に惹かれて峠にいたってみれば、期待したほどの神秘性を感じもしなけれ
ば、峠からの眺望も良いとは言えなかった経験を幾度も重ねたものだ。だ
けれども路傍には石仏が祀られていたり、また枯葉の厚く積り重なった峠
道を歩けば、その峠の歴史を感じたものだ。若狭と京を結ぶ古道は沢山あ
ったようだが、舗装された道路ができると古くからあった峠道や杣道は消
えていった。

わたしが一年を通じてよく通ったところは佐々里峠だろうか。標高八百メ
ートルに満たない峠で、今は舗装された道路が開通していて積雪期でもそ
こを歩けば楽に登ることができる。この道路は広河原と佐々里を結ぶ地元
民念願の道路で、開通を記念して道路わきには桜が植樹されており、五月
の連休ころには桜の花は満開を迎える。かつてはその花の下で宴を催す地
元住民の姿が見られたものだ(この道路は冬季積雪のため閉鎖される)。

春、佐々里峠で眺める緑輝く新緑の時(いっせいに葉が開く)も良いけれ
ど、ものの哀れを感じさせるような秋の風情も良いし、アシウスギの枝木
に雪が降積もる山水画を見るような趣のある冬もまた良いものだ。峠に残
る里人の踏跡を見つけ木々の様相を見て歩く楽しみ方もある。

 

 

積雪期に佐々里峠の”藪の中”を歩く。雪がクマザサを覆っているため、
藪漕ぎもせずに快適に移動できる。

 

 

 

 

春が待ち遠しい…

 

 

 

 

まだら模様の残雪は美しいとは言えないけれど、その光景は早春のころ
日陰の谷間で見かける。そろそろスミレやイワカガミの姿が見れそう。

 

 

 

 

 

残雪がまだある中、空を見上げると天を覆う木の枝に趣きを感じる。

 

 

 

 

早春にトチノキ越しに芦生の森を見る。

 

 

 

 

苔むしたトチノキの大木の枝(廃村灰野付近)。

 

 

 

 

八丁平北側のスキー場跡。クマザサが茂っているだけの斜面である。

 

 

 

ブナ原生林

滋賀県生杉にあるブナ原生林遊歩道入口。撮影時(30年以上前)には
まだ遊歩道は無かった(フイルムが退色していた)。

 

 

 

トチノキの森

佐々里峠付近の山にはトチノキの大木が多く見られる。薪炭用の木や
北山杉を伐採することはあっても、トチノキだけは残している。田畑
の少ないこの地域ではトチノキの実は貴重な食糧でもある。

 

 

 

ミズナラ

北西からの強い風を受ける峠の尾根道では、ミズナラの異様な姿を
見ることができる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

八丁平で見かけたブナ。この周辺では大木はあまり無かった覚えがある。
八丁平は高層湿原なのだろうが、撮影当時は既に湿原は後退し森林化が
進んでいたように感じた。

 

 

 

 

クヌギなどの二次林か。わずかに古道の面影が見える。

 

 

 

 

峠の中腹から正面の山を見ると、間にある まだ葉を出さない木の幹が
美しく思えた(佐々里峠)。

 

 

 

 

“雑木”の細い枝が生き物の触覚のように伸び、印象に残っている。

 

 

 

新芽どき

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

早春の午後も遅い時間、峠を降りて行くと谷間の黒い影をバックに、
白っぽい枝の先に新芽が光る。

 

 

 

佐々里峠

 

 

 

 

 

 

マンサクの花

眼下にわずかに車道が見える(佐々里峠中腹から佐々里方面を望む)。

 

 

 

若葉萌える

 

 

 

 

 

全山緑色に光り輝くとでも言おうか、見ていて清々しい気分になる。

 

 

 

 

 

 

 

 

オグロ坂峠道

八丁平から久多集落へ抜ける道。よく利用されているのか歩きやすく、
綺麗な道である。この道を小浜の鯖を背負った商人が歩いたのであろう。
広河原で又聞きした話では、留守の農家の玄関先に塩サバを吊下げて置
いていったそうである。小浜の塩サバは北山に住む農林業者の貴重なタ
ンパク源であったのだ。

 

 

雨の佐々里峠

 

 

 

 

ミズナラの森

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

佐々里峠の尾根道には多くのミズナラが見られる。

 

 

 

 

 

ケヤキ
「欅は若葉の美しさいふばかり無く、見どころ無き草の屋も背戸に此の
一ト樹あれば画に入るべし。木枯しの風吹く頃の此樹のさまは、また
ひとしほ趣あり。木の葉乱れ舞ひて空高く透ける梢に、三日月の影明
らく懸れる夕なんど、如何に言ひてか此の樹のめでたさを称えんとこ
そ思へ。」…露伴翁『世に忘れられたる草木』より

 

 

 

トチノキの森

若葉が萌え出てくるころのトチノキ。春には陽光が幹に降り注ぐが、
夏には天狗のハウチワのような大きな葉が茂り、あたりは暗くなる。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「トチノキ谷」と名付けたところ。足場が悪く到達するのには時間も
かかり往生した覚えがある。

 

 

 

トチノキ

トチノキの老木に他の植物が着生している(櫃倉峠道)。

 

 

 

ブナ原生林

新緑のころのブナ原生林は明るくて綺麗であるが、真夏にはあまり日も
差さず陰鬱な感じがする(地蔵峠)。

 

 

 

ブナの大木

三国峠に登る途中で大きなブナに出会った。若葉が綺麗だったので下から仰ぎ見る
(どういうわけか、北山ではブナの巨木を見た覚えがない)。

 

 

 

 

シラカバだろうか霧の中で見る若葉が印象に残っている(シラカバも北山
ではほとんど見たことがない)。

 

 

 

カツラの巨木

下谷の大カツラである。

 

 

 

谷間でよく見かけるカツラは成長が速く、数本の木が根元近くで和合し、
一本の木に見えたりもする。

 

 

 

トチノキの文様(木肌)

 

 

 

 

 

幹に見えるトチノキの木肌は独特である。家具や漆器の材となり、綺麗な
杢目がでる。市場では結構いい値段がしている。数年前、小さくても厚み
のある板を買ってバターケースを作ったが、材は思ったより堅く、刳り抜
いて完成するまでに思わぬ時間がかかった(完成品を買った方が安く上が
った)。

 

 

 

 

 

 

 

 

クヌギ

二ノ瀬から貴船山に登る途中(夜泣峠)でクヌギが群生している所があった。
幾度も枝を切られて薪炭などに利用されたのか、痛々しい姿だった。

 

 

 

 

若葉が出そろったころの広葉樹林(佐々里峠)。

 

 

 

トチノキ

夏が近づいたころのトチノキの森。

 

 

 

 

 

樹の相
人長じては漸くに老い、樹長じてては漸くに衰ふ。樹の衰へ行く相(すが
た)を考ふるに、およそ五あり。天女にも五衰といふ事の有るよしなれば、
花の樹の春夏に栄え、葉の樹の秋冬に傲るも、また複(また)五衰の悲を
免れざることにや。

樹の五衰は何ぞ。先づ第一には其の懐の蒸るゝことなり。樹の勢気壮(い
きほひ さかん)にして、枝をさすことも繁く、葉を持つことも多ければ、
やがて風も日も其の懐深きあたりへは通らぬ勝となるより、気塞がり 力閊
(ちからつか)へて自らに葉も落ち枝も枯れ、懐蒸れて疎となるに至る。
これは甚しき衰の相にはあらねど、萬(よろづ)の衰に先だてる衰なり。

…露伴翁『樹の相』より引用(いつものことですネ)。

 

 

 

夏ともなれば広葉樹林はうっそうと葉が茂り、あたりは暗く快適な
山旅とは言えないかもしれない。油断すると足元から山ヒルが這い
上がってくるし(血を吸われるとヒエーと叫び声を上げてしまう)。

 

 

 

ブナ林

夏場のブナ林。二次林なのか大きな木は見当たらない。

 

 

 

由良川最深部の峠道

岩谷出会上流の高巻き道である。谷までは少し距離がある。あたりは
暗い雰囲気があり、原生林のような感じがした。

 

 

 

芹生(せりょう)の里

山間に数軒の民家がある。

 

 

 

芹生峠

真っすぐに伸びた北山杉が美しいところである。昼なお暗いので
手持ち撮影は辛かった(手ブレ等には目を瞑ってください)。

 

 

 

 

 

芹生峠付近は湿度が高いのか、シダ類がよく繁茂していて、わたしの好きな
峠でもある。叡電貴船駅から歩いて二時間もかからない。旧花背峠から芹生
の山里を越え、芹生峠に至る山道も人気のあるコースである。
わたしの好きなコースは、花背峠を越えて大布施で京都バスを降り、上黒田
経由で灰屋川沿いに芹生峠に向うコースである。一日あれば余裕で歩けるし、
途中には灰屋と芹生の山里の趣を楽しむことができる。

峠道と題を付けては見たものの、いざ写真を選ぶとなると地味な写真ばかり
で、 これはという写真が見当たらない。あの写真があったはず、と思って
見直してみたけれど、かなり以前に外してしまったらしく出てこない。その
うちネガも出てくると思うので、その時に投稿するとしよう。

※撮影年:1980年代