枕草子に見る 冬の京都御所 Kyoto Imperial Palace

 

 

 

宮にはじめて参りたる頃

大納言殿のまゐり給へるなりけり

御直衣 指貫の紫の色雪に映えていみじうをかし

柱もとに居給ひて

「昨日 今日 物忌に侍りつれど 雪のいたく降り侍りつれば おぼつかなさになん」

と申し給う

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「『道もなし』と思ひつるに いかで」とぞ御いらへある

うち笑い給ひて 「あはれともや御覧ずるとて」などのたまふ御ありさまども

これよりなに事かはまさらん

物語にいみじう口にまかせて言ひたるに違はざめりと おぼゆ

※『道もなし』ー「 山里は 雪降り積みて 道もなし 今日来む人を あはれとは見む 」・・・平兼盛

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

春は曙

冬はつとめて

雪の降りたるは言ふべきにもあらず

霜のいと白きも

またさらでも

いと寒きに

火など急ぎおこして

炭持てわたるも

いとつきづきし

昼になりて

ぬるくゆるびもていけば

火桶の火も白き灰がちになりて わろし

 

 

 

香炉峰の雪

雪のいと高う降りたるを 例ならず御格子まゐりて

炭櫃に火おこして物語などして 集まりさぶらふに

「少納言よ 香炉峰の雪いかならん」

と仰せらるれば

御格子あげさせて 御簾を高くあげたれば 笑はせ給ふ

 

 

 

人々も 「さることは知り 歌などにさへうたへど 思ひこそよらざりつれ

なほ この宮の人にはさべきなめり」と言ふ

 

 

 

雪のいと高うはあらで

雪のいと高うはあらで、薄らかに降りたるなどは、いとこそおかしけれ。

また雪のいと高う降り積りたる夕暮より、端近う、同じ心なる人三人

ばかり、火桶を中にすゑて物語などするほどに、暗うなりぬれど、

こなたには火もともさぬに、おほかたの雪の光、いと白う見えたるに、

火箸して灰などかきすさみて、あはれなるも、をかしきも、

言ひあはせたるこそをかしけれ。

 

 

 

 

 

 

 

宮にはじめて参りたる頃 物の恥づかしきことの数知らず

涙も落ちぬべかりければ 夜々まゐりて 三尺の御几帳のうしろにさぶらふに

絵など取り出でて見せさせ給ふを 手にても えさし出づまじう わりなし

「これは とあり かかり

それか かれか」などのたまはす

高坏にまゐらせたる御殿油なれば 髪の筋なども

なかなか昼よりも顕証に見えてまばゆけれど 念じて見などす

 

 

 

 

 

 

 

 

木の花は

濃きも薄きも 紅梅

桜は 花びらおほきに

葉の色濃きが

枝細くて咲きたる

藤の花は

しなひ長く

色濃く咲きたる

いとめでたし