金沢の町にレトロな家を探索する

 

魅せられし商家
例によって金沢市内をぶらぶら歩いていると、とある一軒の家が目に
止まり釘付け状態になった。「こっ、これは…」と独白。一見民家の
ようであり、大きな商家のようにも見える。生来の “銘家” 好きの血
が騒ぐ。すかさず胸ポケットからカメラを取り出し撮影する。
すると若女将らしき妙齢のご婦人が通りかかり「珍しいですか」と声
をかけてきて、格子とすだれの効用について教えてくれた。その昔、
お殿様御一行が街道を練り歩き通る際、直接顔を出して拝見するのは
畏れ多いので格子越し・すだれ越しに外の様子を窺ったものとのこと。
格子という物はいくつもの効用があり便利である。家の中からは外が
見えるが、その一方で外からは中の様子が分らない。防犯を兼ねるし
強風の被害も防げるという優れものである。

 

 

格子のある商家

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

ところで商家とするとこの家は何屋さん? 通りに面した部屋の造りを
外から見ると、高いところに換気を考えた通気用の小窓があり格子の奥
には戸が立っていないので換気は万全のようだ。部屋の横には通用口が
あるところを見ると “おくどさん“ を多数備えた台所だろうか。 何を生
業とするかは分らぬが、多くの使用人を抱えていたことは想像に難しく
ない…などと妄想に浸りながら撮影していた記憶がある。

 

 

 

麗しき金沢商家

国道159号線沿いには立派な造りの商家が散見される。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

久保市乙剣宮(番外)

 

 

 

金沢の町並み

 

 

 

「うだつ」のある家

 

 

 

 

 

 

 

“ふるカフェ系” ?

 

 

 

 

 

魅せられし民家
わたしは古い町並みが好きである。旅に出れば地図も持たず、スマホ
とやらも手にせず(高くて買えないのだが)、あちこち歩き回る。ク
ルマは苦手なので行動範囲は狭くなるが自分の足を信じ、気の向くま
まに風を読み、匂いを嗅ぎ “徘徊“ する。ときには不審者に間違えら
れ、おばさんたちにとり囲まれたこともあった(二十歳の頃だが)。
だが今では、膝が痛い、腰が痛いと愚痴り、旅に出るのも近所を散歩
するのも億劫になってきた。

 

 

泉鏡花記念館

記念館には入らなかったけれど、泉鏡花は気になる小説家である。
代表的な『高野聖』をはじめ独特な文体のリズムには感心させら
れる。芸事でも習っていたのだろうか。

 

 

ちょっと休憩

泉鏡花記念館付近で見かけた花の盛りを過ぎた紫陽花

花はさかりに、月はくまなきをのみ見るものかは “ なんちゃって^^;

 

 

 

 

 

 

木造三階建ての家

内外とも植物に囲まれた民家。西隣に “白亜の館” がある。
木造三階建ての民家は、京都市でもよく見かける。

 

 

香林坊より長町武家屋敷跡を望む

気がかりなのは、近年バブル以来の町並みの激変である。京都市では
それが顕著である。こないだまであった立派な長屋門が無くなり、更
地になっていた、ということがしょっちゅうである。更地には、「ホ
テル」が建つという白い看板が。今はやりのアレである。このままで
は無名の棟梁たちが建てた「銘家・迷家」が絶滅しかねない、という
危惧がある。で、「手遅れ」にならないうちに記録に残しておきたい
…と言っていますが、ただ好きなだけです。

 

 

 

白い洋館

 

近江町市場を見学し、付近を探索していると白亜の洋館(かつてはそう
であったと思われる)が目の前に現れた。素敵だ、大いに心の琴線に触
れる。玄関の造作はギリシアの神殿を模したかのようだ。エンタシスの
柱がお洒落であるし、実に手の込んだ造りだ。一見、廃墟かとも思った
が玄関前には鉢植が整然と置かれていたことから推測するに廃墟にあら
ず。それでは住宅かとも思ったが、鉢植以外には生活感のカケラも見当
たらない。わずかに開いた戸の隙間から、呼び入れるように見目うるわ
しき女人が手招きをしている、って『怪異譚』じゃあるまいしそんな夢
のような話はない。イカンまた妄想が…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

雨の降る中、傘を差しながら片手で写真を撮っていると、訝しく思った
のか道いく人が立ち止まって見ている。
一通り撮影を終え建物を観察してみると、現在は倉庫として利用されて
いるようである。竣工当時は地方の銀行か郵便局、あるいは事務所とし
て利用されていたのだろうか。採光や換気には十分に気を遣っている上
に、二階には非常口らしき所も一カ所ある。良く出来ている(上から目
線かよ)。リノベーションを行い “ふるカフェ系” に如何なものかと…

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

金沢市では年間三百軒前後の町家が取り壊されてきた。以前、金沢市
中心街の駐車場不足を補う目的として、金沢市の支援の元、数多くの
町家を取り壊し駐車場にする事業を推進したという。
時代が変り、近年市民の歴史的資源としての金沢町屋への認識が高ま
るとともに、行政側も平成20年3月に『金澤町家継承・利用活性化基
本計画』を策定し、歴史的建築物の保存と活用に取り組んでいくとい
う。

古い町家は住むには不便なことが多い。冬はたまらなく寒いので暖房
代がかさむし、間取りは現代には合わず使いかってが悪い。メンテナ
ンス費用もばかにならない。そんなこともありどんどん取り壊されて
モダンな住宅に生まれ変わる。
ところがである。京都では若い人はそこが面白いといって好んで住む
人が増えているという。西陣あたりの長屋なら家賃も安く済むし、近
所付合いが苦手でなければよい選択である。管理人不在の、セキュリ
ティに不安の残る町家のゲストハウスがどんどん増えるより、余ほど
よいと思うのだが。難しいのは、家主が若い人に貸し出すことに不安
を感じていることだ。間に仲介する行政や法人が必要とされるかなぁ
…と、またまた妄想が。

京都には西陣紋屋町にある “三上家路地“ や清水寺西にある “あじき路
地” が工芸などに携わる若い人たち人気があり、住みたいという希望者
が多いという。観光にも一役かっており、地域の活性化に貢献している。

撮影:2010.7