津軽 – 冬をひかえて
十三湖周辺の景色
津軽地方の冬の訪れは早い。昭和四十年代の半ば、十三湖北部の荒涼とした
景色に魅せられ、わずか二年間ではあったが、仕事の合間に東京から通い続
けた。半世紀前のことなので集落の名は思い出せないのが残念だが、当時持
ち歩いた地図は書棚にあるので調べれば分るはず。
一年目の冬は、積雪がほとんどなく地吹雪を体験することは適わなかった。
二年目の冬にようやく地吹雪を体験することができた。凄まじい風と雪が足
元から胴体めがけて襲ってきた。これは堪らん、と思ったがそれは望んでい
たものであり、嬉しくもあった。
当時の道は、まだまだ舗装されていない地道が多くあり、それも嬉しかった。
二十歳の若者は、荒涼とした景色のなかに何を見ていたのだろうか。
冬の気配
強い風が吹くと電線が鳴く。その音が心に突き刺さり悲しくなるのは
何故だろうか。
冬に備える
老夫婦が買物を済ませ我が家に帰るところであろうか。リヤカーには少しの
荷物、お婆さんの手には醤油瓶か酒瓶が下げられている。
農用馬をたびたび見かけた。荷物の運搬には使い勝ってが良かったのだろう。
子守歌
寒空のなか、子どもを背負った女が歩いている。物悲しい歌が風の音にまじり
聞えてくる。
湖の周囲を彷徨っていると白い犬がお供をしてくれた。見かけない人間を
見ると珍しいのか、犬はついてきた。
荒れる日本海
冬になると日本海から横殴りの強い風と雪が吹き荒れ、出歩くことが困難になる。