奈良 十輪院を訪ねて

 

十輪院とブルーノ・タウト
奈良に来たら、まず小規模ではあるが非常に古い簡素優雅な十輪院を訪ねて
静かにその美を観照し、また近傍の風物や素朴な街路などを心ゆくまで味わ
うがよい。とこう述べたのは、ドイツの建築家ブルーノ・タウトである。
タウトは日本の各地の建築物を見て歩き、実際に和風住宅に住んでもいる。
その観察眼は鋭い。飛騨の合掌造りの合理性、桂離宮の簡素優雅な美しさ。
等々・・・日本人が忘れかけていたものを掘起こしてくれた。
私は数年前から十輪院を訪ねようとして幾度も試みたのであるが、一度も到
達できなかった。今回ようやく境内に立入ることができた、それもまたまた
迷いに迷って。
本堂は床の低い小規模な門跡寺院の様相に見えた。簡素な蔀戸(しとみど)
と正面の広縁がとても美しく、京都御所や桂離宮の建物に通じるものが感じ
られた。組物には胡粉以外、これといった色は見当たらなかったが、建築当
初(鎌倉時代)は極彩色に彩られていたのであろうか。
開基は古く奈良時代で、元興寺の一子院だったと伝わる。宗派は真言宗醍醐
派、ご本尊は地蔵菩薩である

 

十輪院本堂

 

 

 

 

 

 

ドイツ語の会話が聞こえた。彼の国のガイドブックに載っているのだろうか。

 

簡素な造りの蟇股と木鼻

柱は六角形、軒を支えるのに垂木ではなく厚板を用いている。

 

 

大仏様の木鼻は簡素だが趣がある。

 

蟇 股

 

 

山号「雨宝山」の扁額

 

 

本堂正面の障子と蔀戸

 

 

 

簡素ながら美しい本堂の広縁

 

 

本堂の東西には幅の狭い濡縁が設えてある。

 

 

本堂の入口(正)は東北側(写真右手)にある。

 

 

 

 

十輪院山門

 

「それから建築の貴重な宝石とも言うべき新薬師寺に赴いて、何よりも
まずそこの門や塀、植込などに見られる、えもいわれぬ自然的な美しさ
を仔細に鑑賞せねばならない、・・・」
『忘れられた日本』より引用 ブルーノ・タウト著